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基礎研究 血管・呼吸・腫瘍病態外科学分野戻る

”未来を創る研究”

私たちの教室は血管外科のなかでも世界トップクラスの臨床成績を挙げていますが、多くの手術をする中でどうしても解決できない問題が起きてきます。それは現在の医学の限界ですが、これを打ち破るために“未来を創る研究”で新しい医療を構築することを目指しております。

医学研究には2つの方法があります。

です。私たちはこの2つの方法のバランスをとりながら臨床研究と基礎研究を行なっています。この際の共通した基本的な姿勢は“臨床に近い場所で研究する”ことを心がけています。せっかくの研究が患者の皆様の役に立たなければ意味がありません。幸い私たちは手術症例から多くの情報を得ることが可能で、“外科ならでは”の臨床に近い場所で研究をしています。そのような強みを生かして最先端の技術を駆使し私たちの疑問を解決するために研究し、細胞から動物実験へ、そして臨床へと自分たちの教室で実証しています。さらに多施設研究を計画し、国内の多くの施設とコラボレーションしています。

以下に私たちの研究室で行なっている研究の一部をご紹介いたします。

志をもった若手研究者、大学院生の参加をお待ちしています。

また初期研修をしながら博士取得を希望される学生、初期研修医の皆様も、是非ご相談ください。

血管外科医として、さらに研究者として将来を担うフィジシャン・サイエンティストが多く巣立つことを期待しております。

現在、医師(MD)の方のみ受け入れております。申し訳ありませんが非医師で博士課程を希望される方(non-MD、PhD)はお受けしておりません。ご了承ください。

主な基礎研究内容

1. バイパスに使用する自家静脈に発生する内膜肥厚の抑制

動脈閉塞症による虚血障害の重症病変に対しては動脈や静脈をグラフトとした血行再建が第1選択の治療ですが、 この時問題となるのは、バイパス術後2年程度で発症する進行性内膜肥厚によるグラフト狭窄です。これにより再手術が必要となり、ひいては患者の生命予後にも影響します。この自家血管グラフトの内膜肥厚の抑制は血管外科学の長年の研究テーマですが、未だ有効な予防、治療方法は確立されていません。 私たちはこれまでにNFkBデコイによる抑制法を報告していました。また最近ヒトの狭窄病変を遺伝子レベルで調べたところCREの活性化が重要であることを発見し、動物レベルで極めて有効に内膜肥厚が抑制できることを見出しました(下図)。 このような基礎的な検討から、内膜肥厚抑制の新しい治療法の開発を行なっています。

Effect fo K-CREB Gene Transfer on Neointimal Formation after Mouse Wire Injury

2. 大動脈瘤形成因子の探索

大動脈瘤は進行性の疾患で、一定の大きさを超えた場合は手術や血管内治療を必要とします。このため手術に至らない比較的小さな段階で進行を阻止し、退縮させる新たな治療手段が望まれます。
動脈瘤の原因は血管壁の動脈硬化性変化と考えられていますが、同様の病態基盤から閉塞症へ至るものとは極めて対称的で、これらの形態学的な違いを説明する明確な生物学的根拠は未だ見出されていません。
私たちは動脈瘤形成因子を、手術時に採取した組織をプロテオーム解析することで、網羅的に同定し分子メカニズムを明らかにし、さらにこれらの知見から治療法の開発を目指しています。

3. 遺伝子治療による血管新生療法のメカニズム解明

VEGF、FGFなど多くの分子が血管新生を引き起こす分子として登場してきましたが、細胞レベルでの極めて強力な作用に比べ臨床での効果は期待はずれでした。このような現象がなぜ起こるのか、生物学的な説明はできていません。 私たちは骨格筋に内因性の血管新生抑制因子としてCold shock domain protein Aという分子が発現することを見出し、これが一つの説明となることを報告しました。さらにこの分子をノックダウンするだけでも血管新生因子を外部から投与することなしに、血管新生を引き起こすことができることを証明しました。 引き続き生物学によってきちんと証明された血管新生療法の確立を目指して研究しています。

CSDAノックダウンによる虚血改善と血管新生

4. リンパ浮腫に対するHGF遺伝子治療

リンパ浮腫は先天性あるいは癌治療の後遺症として、手足に発生する慢性的な浮腫で、現在のところ根治的な治療法はありません。私たちは新しい治療法としてHGF遺伝子を使ったリンパ管新生療法を開発し、特許を取得しております。現在基礎的な基盤を固めるための研究を続けている一方、アンジェスMG社と共同で治験を準備しております。

HGFによる遺伝子治療(PDE)

5. 癌幹細胞と癌微小環境との関連の解明

血管新生、リンパ管新生に関連してがん研究も行なっています。癌幹細胞コンセプトの登場によりがん研究のパラダイムは大きくシフトし、新しい概念の導入が求められています。癌克服のための治療ターゲットとして癌微小環境における血管新生についてこれまで多くの努力がなされてきましたが、現在最も臨床的に進んでいるbevacizumabによる抗血管新生療法は多くの癌で無病生存期間を延長するものの5年生存率には寄与しないことが明らかとなりました。癌組織における血管新生機構の多様性が示唆され、まさに新たな概念によるブレークスルーが望まれています。
私たちはこの腫瘍血管新生と癌幹細胞コンセプトを結びつけるメカニズムとしてNF-кBを中心とした慢性炎症反応に注目しています。 癌幹細胞という新たな視点から、慢性炎症反応を橋渡しとして腫瘍血管新生と腫瘍組織形成の相互メカニズムを検討し明らかにすることを目指しています。

炎症と癌幹細胞が誘導する血管新生、ニッチの形成

主な競争的研究助成獲得状況 (平成20年以降)

科学研究費補助金 基盤研究(B) 平成19-21年度
「リンパ浮腫次世代治療法―リンパ管新生遺伝子治療と外科治療のハイブリッド治療法」
直接経費総額 1440万円
科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究 平成24-26年度
「静脈内皮細胞機能のエピゲノム調節における長寿遺伝子の役割」
直接経費総額 280万円
科学研究費補助金 特別研究員奨励費 平成19-20年度
「リンパ管新生の検討と癌由来の血管、リンパ管新生抑制遺伝子の探索」
直接経費総額 180万円
科学研究費補助金 若手研究(B) 平成22-23年度
「新規内因性血管、リンパ管新生制御因子の癌増殖、転移に関する機能解析」
直接経費総額 390万円
上原記念生命科学財団 平成21年度 研究助成金
「リンパ浮腫に対する肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子治療の治験を目指した前臨床研究」
直接経費総額 500万円
厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 平成21年度
「原発性リンパ浮腫の患者動向と診療の実態把握のための研究」
直接経費総額 1800万円
厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 平成22-23年度
「原発性リンパ浮腫全国調査を基礎とした治療指針の作成研究」
直接経費総額 3000万円