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基礎研究 肝胆膵・移植外科学分野戻る

臨床応用を目指す体外型臓器灌流保存機能再生システムの開発

ドナー臓器不足を解決し、より信頼性の高い移植医療の確立のために、臓器灌流保存法を発展させ、臓器灌流「機能再生」システムへの展開へ向け、我が国初の温度制御、酸素供給を積極的に可能とする臓器灌流保存機能再生システムの開発を医理工の横断型連携研究で、臨床への展開を目指す。灌流装置と最適化された灌流蘇生液から構成される臓器灌流保存・蘇生システムを開発する

国内国外の研究動向および位置づけ

末期臓器不全患者の治療法として臓器移植医療は救命のみならず、QOL の向上・医療費の抑制の視点などから、高い期待がある。しかし、待機患者数と提供数の乖離は国際的にも大きな課題であり、ドナー不足は深刻な状態である。この解決策の一つとして、高齢ドナーなどの機能劣化のリスクを有するExpanded criteria donor(ECD)を受け入れ、さらには心停止ドナーまでの適応拡大が求められている。しかし、こういったマージナルドナーは標準的なグラフトに比しViability が低下しており、また虚血再灌流障害も高頻度に出現する。臓器機能を良好に保存・維持し、更には機能回復・蘇生が可能となれば、ドナー不足に対する解決策とともに、より質の高い移植医療の提供が可能となる。さらには、灌流状態のモニタリングにより移植前に臓器機能を評価することが可能で、より信頼性の高い移植医療を提供できる。

(国外)

欧米においては腎臓用低温持続灌流保存装置が実用化され、多施設共同比較臨床試験で有用性が報告(Moers, N Engl J Med,2009)され多くの施設で普及してきている(Song RS, Am J Transplantation 2008)。肝保存に関しても臨床での有用性が報告(Guarrera,Am J Transplantation,2010)されている。しかし、これらは臓器保存が主眼であり臓器の機能回復・蘇生までを視野に入れた医療機器は存在していない。

(国内)

灌流装置の開発に関して、臨床応用まで目指し、欧米を意識して研究を続けているグループは存在しない。また、人工赤血球製剤の実用化を目指す研究費を獲得、本研究は実用化の第一歩となる。腎臓灌流保存法における日本発の多くの研究成果(Matsuno,Transplantation,1994)を源流とした灌流保存法を発展させ、臓器灌流「機能再生」システムへの展開を世界に先駆けて、移植臓器有効利用を目的とした臓器灌流保存回復システムを確立し臨床への応用を目指す。

学術的な特色、独創性そしてこれまでの研究成果

臓器を保存・機能を診断し、回復・蘇生をはかることが可能なシステムの確立は極めて独創的である。欧米においては腎臓用低温持続灌流保存装置が開発されているが、温度、酸素条件を考えることで機能を保存するのではなく積極的に臓器の機能回復・蘇生まで視野に入れたものへ向かっている。我々はすでに機械灌流保存のパイロット装置を作成し[特願2011-035,AOIN 1/02] 主にブタを用いた肝臓の保存・移植実験を開始し多くの研究成果を報告した。その結果,灌流中の肝動脈圧パターンで臓器Viability の外挿の可能性(Obara, Matsuno ほかtranspl Proc.2012)を見出し、さらに心停止後摘出された肝臓に関しては保存温度を特に22°Cというsubnormothermiaまで冷温から復温させることによって虚血障害を軽減し肝臓のATP を回復させ、酸素の需要が増加することを見出している(Shigeta.Matsuno Transpl Proc. 2013)これら事実は臓器蘇生への鍵となるものと考えられた。(特願2011-035,A01N 1/02 およびShigeta, Matsuno, Obara et al: Transpl. Proc.2013)

大型動物ブタ肝臓を用いた灌流実験の様子

直近の主な獲得研究費

松野直徒(研究分担者)
科学研究費 基盤研究(B) 2015年度~2107年度
未来医療に向けた臓器機能維持、再生、評価のための肝臓内流動特性の解明
2000万円
松野直徒(研究代表者)
科学研究費 基盤研究(B)2010年-2013 年度
医工学連携によるマージナルドナーに対する新しい臓器保存方法の開発 10,500千円
本研究費を用い、研究用試作機を製作し、灌流保存中の機能評価としてのバイオマーカーを確立した。
1050万円
古川博之(研究代表者)
旭川医科大学 独創性のある生命科学研究 助成金
移植、再生医療の基盤技術としての革新的な臓器灌流システムによる不全臓器、細胞の機能再生、再構築の研究
500万円
松野直徒(研究分担者)
JST―Astep 2015年度
移植臓器機能再生のための臓器灌流による機能評価技術の開発
170万円
松野直徒(研究分担者)
公益財団事業 JKA 2014~2015年度 臓器のゆりかごの開発
600万円
松野直徒(連携研究開発者)
ふくしま医療福祉機器開発事業助成金 申請総額2億3千万円
うち共同研究として2014~2015年度 移植医療のための腎臓灌流保存システムの開発
計600万円
松野直徒(研究分担者)
首都大学東京 学長裁量傾斜研究費 2011-2013年度
医工連携に基づく肝臓灌流機能の解明と再生医療への応用
3000万円

 

川原敏靖 MSD学術研究助成費 受賞 2014年度
ラ氏島移植におけるhuman growth factor を用いたアポトーシス抑制の検討
40万円
川原敏靖 平成27 年度科学研究費助成費 基盤研究(C) 平成27年度〜平成29年度
HGF/c-Met シグナル活性化による移植膵島アポトーシス抑制の試み
(直接経費3,700,000 円+間接経費1,110,000 円:計4,810,000 円)
481万円